大学に行った方がいいと思う理由は、 “コミュニティ格差”を解消できるから

牛島悟さんインタビュー画像2
牛島 悟さん(うしじま さとる)さん。1991年生まれ。
株式会社前人未到 代表取締役

インタビュー(1)から続く

大学に行くことでEQを上げることができる

広報の五十公野さんに御社の活動についてお話を伺った際、「大学は行けるなら行った方がいいけれど、行かなくてもいい。学歴よりも経験が大切だというのが弊社のスタンス」とおっしゃっていました。 “行けるなら行った方がいい”と考える理由を教えていただけますか?

学歴によって、仕事の選択格差はないと考えています。日本の社会は学歴に関係なくエリートになれるし、失敗してもやり直すことができると思うからです。

特に今はSNSで発信することなどでたくさんの人に認めてもらうことが可能な時代です。努力次第で、違う仕事をしながら有名人になることもできます。

でも、学歴によるEQ(心の指数)の違いはあります。EQが高い人なら学歴は関係ないし、大学に行かなくてもいいと思いますが、まだEQが育っていなくて、経済的にも可能なら行った方がいいと思っています。これはEQが学歴に比例していると感じることが多いからです。

なぜ大学に行くことでEQが上がるかというと、人として成長できる環境があるからです。各地域から様々な人が集まるから、価値観が凝り固まっている人でも「もしかしたら、違う考え方もあるのかも」と気づける可能性があります。

さらに大学は高校のようにルールがないので、ある程度、自発的に動かなければならず、他力では過ごせないことも大きいです。だから、キャリアがスタートした時に、大卒の人の方が優秀なんだと思います。仕事ではいきなり自発性が求められるわけですから。

五十公野のインタビューにもありましたが、親が高卒だと、子どもも大学進学という選択肢すらないケースが多いんです。そういう環境だとコミュニティを移動するきっかけがなく、態度変容(外からの影響で、固定化された態度から新しい態度に変わること)が起こらないのです。

中卒、高卒と大卒の差は“セルフマネジメント能力”

前回のインタビューで「大学に行ってみて、高校に行くメリットも分かった」とおっしゃっていたように、学歴の差というのは、高校や大学というコミュニティで過ごした経験の差だということですね。

そうです。学歴格差はないけれど、コミュニティ格差はあるということです。

「サムライキャリア」のユーザーにも話すのですが、大卒、高卒、中卒だったら、大卒が一番仕事を選べると思います。これは学問に費やした時間ではなく、自分の感情を保ってモチベーションをコントロールする“セルフマネジメント能力”の差だというのが僕の持論です。

まず、高卒の人は高校で3年間も集団生活をしなければいけない上に校則もあるから、自分を制御する経験をしてきています。

実際、サムライキャリアのユーザーを見ていると、同じ年齢でも中卒と高卒の人には社会性に大きな差があります。極端な例ですが、会社の服装規定にピアスはNGとあったら、もうその仕事は選ばなかったりする。例え我慢をする場面があったとしても人生を楽しめたという体験をしていないから、何かに合わせるということへの抵抗感が強いのだと思います。

加えて大卒は自分で受験することを選び、ひたすら知識を詰め込む受験勉強をやり切っています。メンタルが強くないとできないことをやり遂げた経験をしているわけです。さらに先ほど言ったように、様々な人と関わる中で自発的に動く経験もしてきています。

結局、大卒というのは「ストレスフルな環境で、色々なことを乗り越えてきた」という経験が評価されているのではないかと。必ずしも大学受験じゃなくてもいいですが、最も分かりやすい指標なのだと思います。

実は大学に行くことはコスパが高い

僕は仕事をする上で一番重要なのは、人としてどれだけ正しく成長しているかだと思っています。これまで大手企業やメガベンチャーで仕事をしてきましたが、社会人として成功している方というのは精神的に安定していて、人としてのステージが高い方が多かったです。

そうやって心を成長させられる環境、コミュニティ格差を解消できる場所として手っ取り早いのが、大学だと思うんです。もちろん、会社など他のコミュニティで成長できるなら一番いいですが、大学は勉強してお金を払えばその環境を手に入れられるわけで、ある意味、コスパが高いと思います。

一概には言えませんが、まだEQが育っていなくて、経済的にも可能なら大学に行った方がいいと思います。逆にキャリアをスタートしてから色々なことを受け止める覚悟ができていて、仕事を通して心も成長していけそうな人は大学に行かずに就職した方がいいと考えています。

偏差値の高い大学を勧める理由

可能なら大学に行った方がいいということですが、大学のレベルについてはどう考えますか?

そこは難しいですね。1つ言えるのは、自分にとっていい変化が起こる他者に出会えるという点では、偏差値の高い大学の方が可能性は高いということです。

あくまでも例ですが、自分とは全く違うタイプの親に育てられた人、自分で起業している人、勉強に熱中している人などから受ける影響は大きいと思います。そういう人は自己肯定感やプライドが高いと思うので、偏差値が高い大学の方が多いのではないかと。もちろん、偏差値の高い大学でなくても、行った方がいいと思います。

親や先生などは“とりあえず大学に行った方がいい”と言い方をしがちですが、牛島さんは大学に行った方がいいと考える理由が明確ですね。

“とりあえず行った方がいい”と言う人にも、本当はきちんと理由があるはずで、それがきちんと言語化されていないですよね。

キャリア教育ができていて、“とりあえず行った方がいい“にもロジックがあれば、本人も納得して意思決定できる。自分で考え抜いて進路を選ぶというプロセスが重要だと思うんです。

やる気だけでは大卒に勝てない

可能なら大学でEQを上げてからキャリアをスタートさせた方がいいということですが、サムライキャリアでは高卒をはじめ、中卒、専門卒、大学中退などの学歴の方の就職支援をされています。そういう方たちにはどのようなことを伝えているのでしょうか?

仕事を選ぶ時、自分の好き嫌いで判断しないということです。例えばYouTubeマネジメントをやりたいという人がすごく多いんですが、採用の場ではその仕事に興味がある人よりも、興味が全くないけれど利益を出せる人が選ばれるのが現実だからです。

本当にやりたいことが見つかった時にそれを選べる人間になっていればいいのだから、初めは自分が選べる選択肢の中から選んでスキルを積み上げて、得意なことを増やしていく努力をするべきだという話をします。中卒や高卒の子にもちゃんと刺さりますよ。

今まで努力したり、自分で考えて行動したりした経験がないのに、やる気があるだけでは大卒には勝てません。よくユーザーが「自分は他の人とは違う」「自分ならできる」と言うのですが、「特別な人なんていない。キャリアの成功というのは平等だよ」と。

EQや学歴で差があるのだから、まずは自分が置かれた場所から1つずつ上っていく苦しさを経験して成長していくしかないんです。だから、サムライキャリアでは、最初から大手企業に就職させたり、人気の職業に就かせたりしたいとは思っていません。そういう所は力がある人間が行くべきで、将来、自分がその立場になって権利を勝ちとればいいのです。

インタビュー(3)へ続く

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