[3]自分の学歴コンプレックスの本当の理由が分かりました

尾和恵美加さん3
尾和 恵美加さん(おわえみかさん)
株式会社Bulldozer 代表取締役運転手 
パラダイムシフター(時の芸術家)

【インタビュー2】から読む

大学は大手企業に入るための切符

–––このサイトでは「大学に行くべきか?」という問いに対する考えをインタビューしているのですが、尾和さんはどう考えていますか?

自分の理想の人生をまず描き、その目標達成に向けて最善の手段として大学進学があるのであれば行くべきですし、そうでないなら行かなくていいと思います。

私自身は、大学に行ったことも、新卒で大企業に入ったことも大正解だったと考えています。

なぜなら大企業に入ったことで、現在の世界がどのような仕組みや構造で動いているのか、大枠をつかむヒントを得られたからです。

そして大学が大手企業に新卒入社するための切符になったので、そういう意味では重要な通過点だったと思います。また、卒業後、OB、OG会で年代をかなり超えた先輩にも会えることを知り、同じ大学に通ったことの大きさを感じることはあります。

勤めていた外資系コンサルティング会社では学閥のようなものはありませんでしたが、起業してからはつながりの大切さを実感しているので、同じ会社に勤める大学のOB、OG会、そして、経営者の大学OB、OG会(こちらは非公認ですが)も作りました。

高学歴の人に感じた「違い」とは?

ただ、学歴については、最近、考えが変わったんです。

私自身、新卒で入ったのが外資系の会社だったこともあり、会社で学歴によって差別されたことはありませんでした。色々な大学出身の人がいたし、実力主義でした。

それだけに、以前は学歴は関係ないという考えだったんですけど、やはり学歴の高い人は優秀だし、違うなと思うようになったんです。

うちの会社では2020年から大学生のインターンを受け入れているのですが、採用する前に課題を出します。

弊社のメインの事業は、アートシンキングというフレームワークを使って、大手企業の新規事業開発や人材開発のワークショップを提供することです。かなり思考力を必要とするため、課題の内容は私がコンサルティング会社で入社1〜2年目にやっていたような本格的な内容にしています。

大学生には難しい課題ではありますが、実際に取り組んでもらうと、いわゆる高学歴といわれる大学の人と、それ以外の大学の人の内容には大きな違いがありました。

一番感じるのは、分からないながらもやり切ろう、よりより内容にしようという「粘り強さ」です。

一方、それ以外の大学の人は、そこまで突き詰めていないと感じる内容が多い。諦めてしまいやすいとも言えると思います。

高学歴の方はやり切る力を持っていて、一概には言えませんが、そういう力が受かる大学の違いになっているのかなと思うようになりました。

私自身、希望の大学に入れなかったのですが、自分にはこのやり切る頑張りが足りなかったんだなと。ここまで頑張れなかったことにコンプレックスを感じていたんだと改めて気づいたんです。

ずっと学歴コンプレックスだと思っていたけれど、「頑張りきれなかったコンプレックス」だったんですね。

–––ただ、その「やり切る力」というのは、受験でしか身につかないのでしょうか?

そんなことはないと思います。例えば大学に行かずに、高校卒業後、すぐに働いてから独立した、「叩き上げ」とよばれるような人にも同じような力を感じることがあります。

人の何倍も動き、徹底的に試行錯誤して、PDCA(Plan計画・Do 実行・Check評価・Action 改善)を何回転もすることで結果を出す。それも「やり切る力」だと思います。

そう考えると、中途半端な結果を一度、残してしまうことで、やり切れない思考癖になってしまうのかもしれません。

受験重視になりすぎた弊害

–––そういう意味では、やはり受験して大学に行くことも大切な経験といえますね。

頑張り抜いた経験は必要だと思うのですが、今は受験重視になりすぎじゃないかなと感じます。

20代、30代になってから「あれ?私のやりたいことってなんだっけ?」と分からなくなっている人が多い気がするんです。

本当は「自分が何を好きか」「自分は何をしたいのか」という問いに10代後半で向き合っておくべきで、そうすればもっと自分の才能を最大化できる人生を送れたかもしれません。

これは目の前にある高校受験、大学受験、就職活動をクリアすることだけに必死になってしまっていることも大きな理由だと思うんです。

大学はあくまで、自分が幸せだと思う人生を送るための手段ですからね。目的と手段を混同させてるケースが、教育でもビジネスでも散見されるので、きちんと分けて考えてみてください。

それに、大きな企業に入ったら安泰なわけではなく、そこでバリューを発揮しなければ働き続けられない時代です。

でも、何も考えてこなかった人は、自分のバリューに気づけないのではないでしょうか。

本当は大人が子どもに考える機会を与えてあげるべきなのだと思いますが、大人自身も現代はたくさん迷っているんですよね。

自分の子どもは10歳で「丁稚奉公」に出したいと思っています

–––確かに自分の子供を見ていても、勉強時間ということに限らず、高校受験、大学受験のために使う時期が長いと感じます。

私は将来、自分が子どもを育てるとしたら、「丁稚奉公」に出したい、10歳から信頼できる会社に預けたいと思っているんです。

私が好きなPanasonicの創業者である松下幸之助氏をはじめ、今、世界で名が知られている日本の大企業の創業者は、だいたいそれぐらいの年で丁稚奉公に出ているんですね。

知識は小学校6年間で身につけてしまって、中学からは社会に出ることによって、自分で考えて価値を作ることができるんじゃないかと。

本気で時代を変えようと思ったら、それぐらいの年齢から人生について考える時間を持つことが必要なんじゃないかと思うんです。

学校の知識は”点”で、それは生きていく中でつながってきて”線”となり、使っていくことで”面”となっていきます。座学だけをずっとやっていくスタイルに加えて、自ら価値を生み出す経験がないと、この知識の立体化ができないと思うからです。

義務教育に新しい科目「文化」を作りたい

–––面白いですね。今後、学校教育はどんなふうになっていったらいいと思いますか?

最近、小学校の教科書をみる機会があって、自分が小学生の頃に比べて、思考させる教育になっていっているんだなと感激したんです。

でも、もう少し進化しなきゃいけないと思います。これまで以上に正解がベースではなくなる時代には、今までになかった新しいものを生み出していく力や世の中に貢献していくことが重要になるはず。そういう時代を生き抜くには、考える力を育み、思考力を高められる教育が重要だと思っています。

アイデンティティーを認識し、思考力を問い、自分にしか生み出せない価値を世界や時代へ投げかける、弊社のアートシンキングも、そうした教育に活用できるものですが、今後、実現したいと思っているのが、義務教育に「文化」のような科目を作ることです。

–––どんな科目ですか?

大人になって、学校で別々の科目として習った歴史や地理の重要性や各教科のつながりに気づくことってありませんか?

例えば、奈良時代、遣唐使や遣隋使を派遣していた奈良には、数百年の歴史をもった薬の長寿企業が多いです。そして、遷都で都が大阪、京都と北上していくわけですが、有名な製薬会社の本社は関西圏が多いです。また、奈良ってお寺も多いですよね?同じように、建設業の本社も、元々関西圏だったことが多いんですよ。

そういうふうにつながりを考えていくことで、日本史だけでなく、世界史や産業のことも学んでいける。

色々な角度から総合的に学ぶことで、生きた知識になっていくはずです。やはり、単なる暗記のための知識では、色々な角度から思考するための道具にはなってくれません。

さらに、天然痘の流行した奈良時代と、新型コロナウイルスが流行している現在を比較して、歴史から今後の予想をするなど、俯瞰して自分の頭で考えるヒントを得られるので、時事問題にも興味を持つこともできます。

このように考えられるようになったのは、留学したデンマークでの経験がきっかけです。北欧の夏は白夜で有名ですが、冬は逆に日照時間が短くなります。日が出ているのは9時から15時ぐらいなので、家で過ごす時間が長くなるわけです。

実際に住んでみると、本当に暗い時間が長いんです。だから家の中で幸福度を保つ工夫が大切になったんだ、家を快適にするIKEAのような企業が誕生したのだ…と、学校の科目でいうと地学、地理、歴史、文化、その国の主力産業がつながっていたんです。

日本とは異なる環境で暮らしてみて、初めて見えたことは多かったですね。

–––先程のシェアハウスもそうですが、環境を変えることによる気づきが多いですよね。

子どもの頃から今のような行動力があったら、とすごく思います。わが家はこう見えて、すごく保守的な家庭で、母も弟も心配性(笑)。そういう環境にいたら、やはり行動的にはならないですよね。私も意外と繊細ですし、心配性です。何か始めるときは、今でも色んな詳しい人に話を聞きにいきます。

あと、ヨーロッパで暮らしたことは、感覚を転換させる大きなきっかけにやはりなりました。デンマークの後、元々バルセロナで起業しようと思って住んでいたのですが、日本でいうと東京から名古屋に引っ越すぐらいのイメージなんです。

だから、1度、ヨーロッパというコンフォートゾーンの外側に行ったことで、挑戦のハードルは下がりました。

–––では最後に今後、やっていきたいことを教えてください。

アートシンキングを広めて、本当に次の時代以降、できれば1000年先にも残るような本質的かつ革新的な価値創出をしていきたいです。

次は日本的価値の時代が来ると思って帰国したので、できれば日本の企業のお手伝いをすることで、それを実現したいですね。

海外進出や領域を広げていくこと以外に、アートシンキングを使って自社の製品やサービスもたくさん生み出していきたい。一番生み出したいのは、時代留学というタイムトラベル事業ですね。

最近は関連の本なども出ていて、やはり自ら正解を作り出していかなければいけない時代だという認識が広まったからだと思います。

まだ時間がかかると思いますが、今後、思考法の主流になっていくと信じています。

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株式会社Bulldozer(ブルドーザー)は才能爆発の連鎖を企業文化として根付かせる”世界で唯一のアート思考専門コンサルティング会社”です。パーパス経営や人的資本経営、イノベーション創出など、日本内外問わず世界的メーカーを中心に、働きがい/企業価値向上のパートナーとして選ばれています。
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