高卒で後悔していないけれど、
娘には大学に行ってほしい理由
高校ではなく、大学だから得られるもの
–-以前、このサイトのことをお知らせした時に、「自分は高卒で全く後悔していないけれど、娘には大学に行ってほしいと思っている」とおっしゃっていました。
当時、私自身は「自分が行かなかったことを後悔しているから、子どもには行かせたい」と思っていたので、その考えが新鮮でぜひどんなふうに考えているのか伺いたいと思ったんです。
絶対に行って欲しいということではないんです。
ただ、私は高校生の時に「広報」っていう仕事があるなんて知らなかったし、テレビや映画の仕事で「タイムキーパーさん」が存在するなんて考えたこともなかったんです。
でも、4年間あれば、高校生では知り得ない職業を知る時間があるでしょう?それに高校生だと、私立に行ったとしても、ある程度、限られた地域から集まったメンバーになってしまいます。
それに大学なら様々な人との出会いがあるだけでなく、保護者の職業も、もしかしたら牧師さんだったり、焼き芋屋さんだったりするかもしれない。本人だけでなく、それぞれの背景が異なる人が集まっているのが面白いと思うんですね。
そこが、娘には大学に行ってほしいと思う一番の理由です。
–娘さんは今、高校2年生でしたね。
自分の行きたかった都立高校に進学して、楽しそうにやっています。
娘が通っていた小学校は1学年21人しかいなくて、6年間クラス替えなしでした。中学も人数が少なかったので、さまざまな人とのつきあい方を学ぶ期間がもっと必要だと感じることも大学に行ってほしい理由ですね。
親の仕事は大学に行くメリット、デメリットを示すこと
— 進路についてはどんな話をしているんですか?
大学に行ったら面白いんじゃない?とは話しています。
ただ、あくまでも選ぶのは娘であって、親の仕事は、経済面では大学に行けると伝えてあげること、そして大学に行くメリット、デメリットを示してあげることだと思っています。
メリットは出会う友達が増えること、海外旅行をするとか、色々な経験を気兼ねなくできること。社会人になると責任が伴うので、自分の思いだけでは実現できないことが増えてしまいますよね。
デメリットは、職人のように経験年数がものをいう仕事の場合、まわりより遅れることだよと。
ただ、私も夫も大学に行きなさいとは言わないです。私たちの人生ではない、ということは肝に銘じています。
子育てという意識を持たずにやってきた
— 子どもに“こうなってほしい”という思いが強い親も多い中、珍しい距離感だという気がします。
確かに一緒に歩いていても親子という空気感がないみたいです。職務質問されたこともあるぐらいなので(笑)。
きっと子育てという意識を持ってなかったからだと思います。
これは私の主治医の影響が大きいです。娘が生後1カ月に満たない時に「育ててあげると思ったらダメだよ。子どもとの相性が合わないことだってあるし、1人の個体として見た方がいい。親子って言ったって別物なんだから」と言われたんです。
「子どもというのは、そもそも色々な人に見てもらって育っていくのだから、どうにかなるさ、ぐらいの感覚で、この子と暮らして行きなさい」と。
娘は生まれた時すごく痩せていたんですが、「食についても一切の情報を入れなくていい。1 日 3 食で、1 週間 21 食。そのうち 7 食きちんと食べられたらそれでOK。だって、大人だって食べたい時と食べたくない時があるでしょ?」とも言われました。
こういうことを初めに言ってもらえたことはすごくよかったですね。だから、親子というより、共同体のような感覚でやってきました。
–娘さんに小言を言ったりすることもなさそうですね。
「勉強しなさい」は言ったことがないです。言わないというより、言えない。自分が学校の勉強をしてこなかったのに説得力がないですから(笑)。
娘からは「ハハはしゃべることしかできないくせに」と言われていて、あまりにも知らないことが多いから、家では「知ら神様」と呼ばれてるんですよ(笑)。
自分の子どもに「こうなってほしい」という思いが強い人は、自分のやりたかったことを子どもに重ねてしまうのかもしれないですね。
でも、親の思いが強すぎると、私のように余計に違う道に行こうとしてしまうんじゃないかなと思います。
[2]に続く
[所属事務所によるプロフィール]
[あさがさんが理事を務める一般社団法人 日本収納検定協会のHP]