インタビュー1から読む
※記事に書かれている内容はあくまでも山田香織さん個人の考えであり、ダイキン工業株式会社の見解ではありません)
すべて自分で決断してきたことが自信につながっている
–お話を伺っていると、山田さんは会社の中では高学歴の部類ではなく、学歴で判断されることに反発する気持ちもないわけではない。そういう環境にいると「自分はダメだな」という気持ちになってしまう人もいると思いますが、そうならずに働けている理由はなんでしょう?
今でもダメだなとか、このままでいいのかなということは常に思っています。確かに小学校の時に臨床検査技師になろうと決めていましたが、決して迷いなく進んできたわけではなく、むしろ、ずっと迷いながら、人と比較しながら、ジタバタしてここまで来ました。
それでも高校、大学、就職など、どんなことも自分で考えて選んできたことは間違いありません。そのことが一番大きいです。最後は自分。やはり親に言われてとか、「まわりがこう言うから」という考えで選んでいると、何かつまずいた時に例えば学歴のせいにしてしまったり、人のせいにしてしまったりしがちです。1つ1つ自分で決断することがとても大事だと考えています。
もう1つは、ダイキンという会社が「人を基軸におく経営」を経営理念にしていて、本当に人を考え、個性を尊重してくれる会社であることが大きいです。
医療機器の部署から異動して広報を任せてもらい、商品や採用などの広報・宣伝活動やブランド構築などを経験させてもらいました。その後はIR(投資家向け広報)を担当するようになり、今は新入社員の研修、社内の女性活躍促進をテーマにしたプロジェクトのメンバーなども任されています。
この会社でなかったら、こんなふうに仕事を続けてこられなかったと思いますし、そうやってたくさんの経験を積んできたことがやりがいや自信につながっています。
“幸せを感じる生き方は?”という視点で進路を選ぶ時代に
–では、山田さんはご自身の経験から、大学に行った方がいいと思いますか?
それはその人のありたい姿に関わるので、いいとも不要とも言えません。ただ、もし何の条件もなく二者択一なら、私は必要ないと思っています。特に知識教育だけを目的にするなら、人の中で揉まれながら、自分を見つめて、自分の道を見つける方が、よほど将来の役に立つのではないかと。
かなり先の話になると思いますが、例えば“信用経済”のように、これからはお金の考え方、仕事の考え方が変わっていく可能性もあるでしょう。
そういう変化の中で、今後はどこの学校で学ぶとか、学歴とかそういうものではなく、“自分が本当に幸せを感じられるのはどんな生き方だろう”という視点で、進む道を選ぶようになっていくのではないかとも思うんです。
当たり前に大学で学ぶのではなく、必要になったら学べばいい
もちろん、人を表現する1つとして学歴があると思うので、学歴をステータスにすることがあってもいいと思います。
このように価値観は様々ですし、時代は変化し続けていきます。実際、AI、IoTや外国人の社員と一緒に働くことが当たり前になるなど、会社で働いていてもたくさんの変化を感じます。
それなのに「とりあえず大学に行っておいた方がいい」という発想では、私たちの世代と何も変わりません。
それにこの先、大学をはじめとする学校のあり方が変わらないはずはないと思うんです。すでに中高一貫校や幼保一体化など、学校の形はすでに変わり始めていますよね。
それによって、いずれ受験というシステムがなくなったり、学校のあり方も知識だけ学ぶ場と、知識ではなく、人と人の間で学ぶ、社会性のようなことを学ぶ場に2極化したりするかもしれません。
私個人は、今のままでは、将来、学校という存在すらなくなる可能性もあると危惧しています。
地元つくばで和太鼓の会の活動に関わっていますが、そこで子どもたちと接したり、保護者や教師をしている友人と話したりして、学校が“勉強以外のことを経験し、人と接する中で学ぶ場”でなくなりつつあると感じるからです。
先生に叱られたり、社会に出て必要なことを教えてもらったり、人との関わりを学んだりという経験ができる場ではなくなっているなと。教育改革が叫ばれてずいぶん経ちますが、もっと学校にその役割を発揮してほしいと思います。
もし、学ぶという目的だけで考えるのであれば、私自身は中学、高校を卒業して当たり前のように大学で学ぶのではなく、その都度、必要になったら学べばいいと思っています。
そして、知識以外は、意識的に色んな人と関わる場所に行き、勉強以外の勉強をすることが、好きなことを見つけることにつながると考えています。
大手企業ならいい会社で、自分に合っている?
–ただ、ダイキンのような大手企業で働きたいと思った時、今の新卒採用システムだと「とりあえずいい大学に入っておこう」と思ってしまうのは当然という気がします。
確かに応募数が膨大になってしまうのを避けるため、大手企業になるほど書類選考の段階で最終学歴を設定せざるをえないというのが現状です。しかも高学歴の方は、やはりそれなりにずっと努力をしてきた方も多く、自身を磨いてきているようにも思うので、学歴を設定することに全く意味がないとも言い切れないなと。そこは色々と歯がゆい思いもありますが、今後は変わっていくかもしれないという期待もあります。
でも、そもそも“いい大学”ってなんでしょうか?大手企業ならいい会社で、自分に合っているのでしょうか?
私は新入社員研修に関わっていますが、2005年頃から、新入社員を見ていて「なんだか自分の中2の頃みたいだな」と思うようになったんです。
どういうことかというと、会社に入って初めて「自分は何が好きなんだろう」ということを真剣に考え始めたんじゃないか、という社員が多いんですね。自分は何が好きか、何が苦手か、どんなことがイヤかが分かっていない。
もちろん私だって、自分のすべてを分かっているわけではない。でも明らかにそういう考えがあまりないと感じるんです。
しかも会社に入れば当然、好きな仕事ばかりできるわけではないし、色々な年代、立場の人と関わらなければいけなくなります。
でも、会社で初めて自分の嫌なことに気づき、それをやることになって、「できない」「やりたくない」と立ち止まってしまう。そういう人は、うまくいかなかった時に「だってあの人が○○したから」と他人のせいにしてしまいがちです。
自分を知り、考えて行動していくことが大事になっていく
–でも、受験や就活など、厳しい競争をくぐりぬけてきている人も多いのではないですか?
確かにそうです。ただあくまで私の世代との比較になってしまいますが、縦のつながりには弱いと感じます。同年代など、横のつながりでは色々な人とぶつかってきたかもしれませんが、様々な人と関わってきていないのではないかと思います。
そういう社員には「今まできちんと考えてこなかったからダメ」と否定するのではなく、頑張ってきたことを認めた上で、会社ではどうすればいいかを考えられるようにフォローしています。
–では、どういうふうに社会人までの時間を過ごせばいいと思いますか?
「遊べ」「熱中しろ」です。何が好きで、何が嫌いなのか。得意なこと、苦手なことは何か。自分を知ることに時間を費やすべきです。
そして、どんなことに対しても「なんでだろう?」「どんな理由があるんだろう?」と考え抜いて、そこで何かに気づいたら、何らか行動していくことが、これからは今まで以上にもっと大事になっていくと感じています。
お子さんがいる同世代の友人ともよく話をしますが、親が一人ひとりの個性に気づかせることも大切だと思います。
社内には高校を中退して大検を受けて大学に入り直した人、大学に2回も通っている人などもいますが、そういうふうに一般的でないルートを通ってきた人ほど、とても魅力的に感じます。その本人としては様々な思いを抱えているかもしれませんが、これは自分のことを知る作業をして、自分で考えて選択してきたからだと思うんです。
そうやってとことん自分と向き合った上で、大手だからという理由をスタートにするのではなく、マインドや感性が合うかという視点で会社を選んで欲しいと思います。それが充実した会社生活につながるはずです。
ダイキン工業株式会社
山田さんが発起人となって活動している「BRIなでしこプロジェクト」
山田さんが活動している和太鼓の会 筑鼓
※書かれている内容はあくまでも山田香織さん個人の考えであり、ダイキン工業株式会社の見解ではありません。