自分が兄の影響で違う世界を知ったように 中卒、高卒の人に気づきを与える存在となりたい

牛島悟さんインタビュー画像3
牛島 悟さん(うしじま さとる)さん。1991年生まれ。
株式会社前人未到 代表取締役

インタビュー(2)から続く。インタビュー(1)も読む

仕事の成功に攻略法はない。スキルを身につけていくしかない

サムライキャリアでは中卒、高卒、専門卒など、大卒でない方の就職支援をされています。サポートで意識が変わり、活躍しているユーザーも多いと聞きました。

10人いたら、10通りの関わり方をしていますが、中卒や高卒の人に共通しているのは勝ちたいから営業、ラクしたいから事務というようにニーズがパターン化されていることです。自己評価がやけに高くて、他己評価と合っていないことが多いのも特徴ですね。

だから、まずはとにかくユーザーを理解するために話を聞いていきます。最初から求人の話をすることはありません。

変わりたいけれどどうすればいいか分からなくて動けないという人も多いですが、過去に頑張った経験がある人や強烈なコンプレックスを抱えている人ほど頑張ります。

かつては非行に走っていた中卒の18歳の女性のケースでは、本人は学歴がないから飲食業しか無理だと決めつけていたんです。でも、じっくり話していくと、人に負けたくないという思想があることが分かり、営業を勧めました。今、まさに態度変容が起こって、ものすごく頑張っていますよ。

–ユーザーの方と接する上で心がけていることは何でしょうか?

とにかく話を聞くということはもちろんですが、幸せの定義というのは人それぞれだということを忘れないようにしています。好きな仕事、やりがいのある仕事をやれば幸せというわけじゃなくて、仕事をする環境、労働時間なども関係してくると思うからです。

それだけに「頑張りたくない」というのも1つの答えだと思っています。サムライキャリアのサービスは「変わりたい」と思っている人にはすごく刺さりますが、逆にモチベーションが低い人を無理に頑張らせるようなことはしません。その人に合った会社、働き方を提案します。入った会社で変わる可能性もありますから。

ユーザーには「自分にとっての“人生の成功”は何か、その定義は自分で決めなさい」「ただ、仕事の成功には特別な攻略法はなくて、スキルを身につけていく以外にないよ」と話しています。

そこで言う“スキル”とは具体的にどんな力ですか?

営業、ものづくりなど、その仕事に必要な「コアスキル」はもちろんですが、人の気持ちを理解する力、自分の考えを言語化する力、今の状況を整理する力、課題を認識する力など、どこの会社でも通用する「ポータブルスキル」が一番大事だと考えています。

優秀なビジネスマンは身につけていますし、これがあればどこでもやっていけると思います。これは大学に行ったからといって身につかないので、仕事を通して自分で考え、行動しながら伸ばしていくしかありません。

子どもに失敗させたくない親御さんが多い

サムライキャリアでは、今後、どんな展開を考えているのでしょうか?

設立から2年目を迎え、全国にサポートの拠点を増やすと同時に、現役高校生向けの就職支援サービスも行なっていきたいと考えています。

現在の日本では大卒というだけで就職が有利な会社が多いですが、中卒、高卒の人が10人いたら、そのうち1人は光るものを持っています。例えば自己評価と他己評価に差がなく、自分で意思決定できるような人で、企業の人事の方にもきちんと評価していただけます。

でも、中卒、高卒というだけで横並びにされてしまうのが現実です。そこを変えていきたい。それに中卒、高卒の子は素直なので、人を育てるいい組織に出会えればとても伸びます。そういう人と企業をつないでいきたいです。

将来的には親御さん向けの支援サービスも検討していると伺いました。

お子さんのキャリアや進路について悩んでいる親御さんの相談にのりたいと思っています。なぜ、そういう支援サービスをやろうと思ったかというと、就職支援で親が子どもに与える影響は非常に大きいのに、親御さんが子どもに求めていることと、マーケットが人材に求めるものとがズレているからです。

これまでは企業も品質がいい製品を安く、早く、真面目に作れる人を採用すればよかった。でも、自動車メーカーの競合が他メーカーではなくGoogleの時代、社員に求められるものも当然変わります。そこに気づいていない親御さんが多いんです。

ユーザーの方の親御さんと接して感じることはありますか?

過保護な親御さんが多いと思いますね。わが子に失敗させたくないという気持ちが強いせいか、「こっちがラクそうだから行きなさい」と勧めるような方が結構いて、「その行為って、本当に子どもへの優しさですか?」と言いたくなることがよくあります。

一番大事なのは、自分で考えてチャレンジして、失敗しても軌道修正していく力ではないでしょうか?日本の社会なんて何度でも立ち上がれるわけですから。

親の言うことを素直に聞いてしまうお子さんが多いというのも意外です。

色々なコミュニティで様々な価値観と接触してきた人なら親の言うことに違和感を感じられるけれど、異なるコミュニティを知らないと、言われたことが正しいと思ってしまうんでしょうね。

色々な親御さんがいますが、まちがったことをした時にがっつり叱るようなお母さんの方が、お子さんも伸びます。親を見れば子が分かると言いますが、子を見れば親が分かります。

大切なのは、選んだ道を成功に変えていくこと

今、中学生や高校生に伝えたいのはどんなことですか?

人生は楽しいから、今、うまくいっていなくても落ち込む必要はないよということですね。まわりのイケてない大人が色々ネガティブなことを言ってくるかもしれないけれど、自分の力でどうにでも変えていけるということは知って欲しいです。

そのためには他力本願で環境に人生を委ねてしまうのではなく、自分の意志で決めていくことです。「これを選んだら後悔するんじゃないか」と躊躇する人が多いのですが、やるべきことは選んだ道が正解になるように自分で行動していくことだと思います。

こういうことをもっと高校などで伝えるべきだと思うので、教育を変えていきたいという思いもあります。

高校中退から大検を経て大学に合格後、大手メーカー、メガベンチャーなどで働いた後、起業されています。その経験をどんなふうに活かしていきたいですか?

有名な大学に行けば人生変わると思っていましたが、実は就職活動では高校中退歴がネックになり、苦労したんです。

当時はベンチャーに対して大変なイメージがあって、大手企業ばかり受けたのですが、銀行などはすべて不採用でしたね。考えてみれば当たり前で、あえて他と異なる1人を混ぜて和を乱す必要なんてないからです。

結局、大手メーカーに入社しましたが、すぐ自分には合わないと気づきました。ルーティンは合わないし、実はベンチャー向きだったんだと。

こういう経験を通して、組織による考え方の違いが分かるようになりました。また、見た目や本人の希望だけで相手の適性を決めつけてはいけないと、ユーザーを深く理解することにつながっています。

そして、何よりも大きい経験は、兄の影響で違う世界を知り、大学受験をきっかけにコミュニティを移動することができたことです。

正直、それは運もあったと思います。実際には違うコミュニティを知る機会はなかなかありません。だから、サムライキャリアがそういう場となり、気づきを与える存在になっていきたいですね。

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